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先端の光科学に役立つ第一原理計算ソフトウェアSALMONの開発


研究成果のポイント

  • 物質科学の第一原理計算注1)法に基づいて光と物質の相互作用を記述する、これまでにない光科学分野のソフトウェアSALMON注2)を開発しました。
  • SALMONはオープンソースソフトウェアとして公開されており、誰でも無償でダウンロードし利用することができます。
  • スーパーコンピュータでSALMONを用いると、アト秒科学注3)や近接場光科学注4)などの先端の光科学実験に対する丸ごとシミュレーションが可能です。

国立大学法人筑波大学計算科学研究センター 矢花一浩教授の研究グループと、大学共同利用機関法人自然科学研究機構分子科学研究所 故 信定克幸准教授の研究グループは、国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構関西光科学研究所、東京大学工学系研究科、マックスプランク物質構造動力学研究所、ウィーン工科大学、ワシントン大学の研究者らと共同で、物質科学の第一原理計算法に基づき、先端の光科学研究に役立つソフトウェアSALMONを開発しました。
光が物質に照射すると、まず物質中の電子が動きます。SALMONでは、この非常に短い時間で起こる電子の運動を物質科学の第一原理計算法を用いて計算します。SALMONではさらに、物質中の光の伝搬を計算することが可能です。この光の伝搬に対する第一原理計算は矢花教授のグループが開発した理論に基づいており、他のソフトウェアにはない新しい機能です。SALMONではまた、高度な並列計算が可能であり、スーパーコンピュータを駆使して数千原子からなるナノ物質の光応答を計算することが可能です。SALMONは、光科学分野の今後の発展に大きく貢献することが期待できます。

本研究の成果は、2019年2月号の「Computer Physics Communications」誌で公開される予定です。

* 本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業CRESTの研究課題「光・電子融合第一原理ソフトウェアの開発と応用」、文部科学省ポスト「京」重点課題7「次世代の産業を支える新機能デバイス・高性能材料の創成」、および日本学術振興会科学研究費補助金による支援を受けて行われました。


用語解説

注1) 第一原理計算
物質に含まれる原子の数や種類が指定されると、量子力学に基づいて電子の状態を計算し、物質の構造や性質を調べることができる方法。密度汎関数理論などに基づく多くのソフトウェアが開発され、物理学や化学、材料工学の分野で用いられている。

注2) SALMON
Scalable Ab-initio Light-Matter simulator for Optics and Nanoscience(光学とナノ科学のためのスケーラブルな非経験光−物質シミュレータ)の略。 http://salmon-tddft.jp も参照。

注3) アト秒科学
アト秒は、10-18秒という非常に短い時間のこと。電子が原子の中を1周するのにかかる時間は100アト秒くらいで、現在の先端の光科学ではこれよりも短いパルスの光波を作ることが可能となっている。このような短いパルス光(アト秒パルス)を用いて、物質中の電子の運動を調べ制御する科学技術がアト秒科学と呼ばれる。

注4) 近接場光科学
光の波長よりも小さいナノスケールの物体に光を照射したとき、物体の表面にまとわりつくように発生する特殊な光を近接場と呼ぶ。回折限界を超えた光の波長以下の物質に関する情報を得たり、微小な物質の加工方法として注目されている。


詳しくは、 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構ホームページ をご覧ください。